ヘッドレスコマースとは?ヘッドレスコマースを導入するべき理由

近年、顧客ニーズが多様化し、そのニーズに答えるためにもECサイトは日々発展をしています。その中でも「ヘッドレスコマース」という新しいECシステム(アーキテクチャ)が注目を集めています。ここではそもそもヘッドレスコマースとはなんなのか、なぜそのヘッドレスコマースが注目されているのか、その導入するべき理由と合わせて解説をしていきたいと思います。

ヘッドレスコマースとは?

ヘッドレスコマースとは、自社ECサイトでの販売だけでなく、SNSやブログ、音声、VRなど、様々なチャネル(=流入経路)にスピーディーに対応できるう、次世代型のECシステムです。

ヘッドレスコマースの概要

ヘッドレスコマースを理解するには、まず「ヘッド」の意味を理解する必要があります。「ヘッド」とはEコマースにおける顧客と接するフロントシステムのことをいいます。具体的には、ECサイトで商品が並んでいる、顧客が接するおもて面を指します。その「ヘッド」が「レス」つまり、フロントシステムとバックオフィスシステムが分離しているシステムアーキテクチャ(構造)になっています。

ヘッドレスコマースでは、フロントシステム(自社ECサイト、SNS、ブログ、音声、VRなど)を柔軟に変更することができます。バックオフィスシステムに関係なく自由な開発できるため、その結果として、顧客とのタッチポイントの自由度が上がり、様々な顧客体験の提供につながります。

つまり、ヘッドレスコマースとは、昨今の多様化する顧客との設置面(自社ECサイト、SNS、ブログ、音声、VRなど)に対して、都度システム構築する手間や工数を省き、API(※1)を介してスピーディーに連結して、商品を展開できる様にしたECシステムなのです。

※1 API…”Application Programming Interface”の略。既存のアプリケーションの機能を一部公開して、共有できるようにした仕組みのことです。

ヘッドレスコマースの仕組み

ヘッドレスコマースは前述の通り、フロントのシステムとバックエンドのシステムを分離することを意味します。それぞれを別々で開発して、APIでフロントエンドとバックエンドを連携することがヘッドレスコマースの仕組みになっています。

ヘッドレスコマースの代表格として、Shopify(ショッピファイ)というクラウド基盤のマルチチャネルコマースプラットフォームがあります。現在、175カ国170万店舗以上で使われています。外部サービスとの連携がしやすく、デザイン性の⾼いECサイトを作成できることから⼈気となっています。

Shopifyでは無料で使用できるAPIも多く用意されているため、本来であれば時間と費用をかけて開発する新しい販売チャネルへの対応も無料かつ迅速に行うことが可能になっています。

ヘッドレスコマースを導入するべき理由

OMO・オムニチャネルの発達について

ヘッドレスコマースを導入するべき理由を説明する前に、現在聞く機会の増えた、OMO・オムニチャネルについての説明をしたいと思います。

「OMO」とは”Online Merges with Offline”の略で、オンラインの領域とオフラインの境界が混ざり合って、様々なデータに基づいたマーケティング施策を実施することを指しています。例えば、実店舗での購買情報をECサイトに連携することで、顧客一人一人にあったマーケティング施策を実施できるようになります。

これはデータに基づくパーソナライズ施策をリアル店舗とネット店舗両方で実施できることを意味しています。また、「オムニチャネル」はECサイトやSNS、実店舗など様々な販売チャネルを統合して顧客とのタッチポイントを増やすマーケティング施策です。例えば、リアルな店舗だけでなく、InstagramやECサイトで販売情報を流して、自社サービスの認知度の増加につなげることを指します。

近年ではECサイトやSNS、データ処理技術が進化しているため、OMOとオムニチャネルは日々発展をしています。この二つのマーケティング施策と相性の良いECの形態がヘッドレスコマースとなっています。

これからはヘッドレスコマースの時代が来る

IoTやSNSの発達により、ユーザーはインターネットと接する機会が大幅に増加しました。ECサービスも自社のECサイトだけでなく、SNSやウェアラブルデバイスの情報に基づいた商品の提案ができれば、より多くの商品を販売できそうです。

しかし、既存の従来型のEC(※2)は専用のWebページのみでの販売に特化しているため、SNSなどの他サービスに連携して商品の販売を行うには、工数のかかる開発が必要になります。ヘッドレスコマースならば、そのような販売方法の変化にも柔軟に対応ができるため、顧客ニーズにあった様々なサービスの展開が可能になります。

OMOやオムニチャネル化が進み、変化の激しくなっていくEC市場においては、より変化に対応しやすいヘッドレスコマースの形態は重要度を増していきそうです。

※2 従来型のEC…フロントシステムとバックオフィスシステムが一体化したECサイト

ヘッドレスコマースと従来型ECの違い

ここまで述べてきたように、これからのECシステムの形態としてはヘッドレスコマースは多くなることが予想されます。しかし、全てのECサイトがヘッドレスコマースを導入することが難しいことも現実です。特に従来型ECですでにサービスを展開している場合は、移行が難しくなっています。

ここではそのような問題を整理するために、ヘッドレスコマースと従来型ECの違いをまとめてみました。自社サービスの特徴やシステム構造を理解した上でヘッドレスコマースを導入するべきかどうかを考えてみましょう。

ヘッドレスコマース従来型EC
開発難易度フロントシステムを別途構築する必要があるため、自由な反面、初期の開発難易度は高くなる。フロントとバックシステムが一体型のシンプルなシステム構成のため、比較的難易度は低い。
集客(販路拡大)APIを介して、様々なサービスに柔軟に対応できる。従来型のECと比較すると圧倒的なスピードで、他サービスとの連携を進められる。複数のシステムと連携しようとすると、構造やデータの整合性を都度整理する必要があり、多くの工数が必要になる。変化の激しい現在の市場においては対応が遅れてしまう可能性がある。

上記の表の通り、ヘッドレスコマースは開発難易度が高いため、全ての企業がすぐに適応できる訳ではありません。ヘッドレスコマースを導入したい場合には、自社サービスの特徴を理解して、どのような販売形態を取る可能性があるかを十分考慮する必要がありそうです。SNSやその他のWebサービスと連携をして、様々なタッチポイントで販売を目指すサービスの場合には、ヘッドレスコマースを導入した方がいいかもしれません。

前述した、Shopifyでは標準的なECシステムの機能が揃っており、ヘッドレスコマースとして活用できるため、初期の開発難易度を抑えることができるため、近年多くのD2Cブランドで導入が進んでいます。

ヘッドレスコマースの事例紹介

コアラ・マットレスでの事例

コアラマットレスは、2015年にオーストラリアで創業されて、2017年に日本に上陸した寝具のECベンチャー企業です。SNSでの販促を中心に、D2C(オンライン直販)での販売方法で20年以上革新のなかったマットレス業界に変革をもたらしたことで有名な企業です。

コアラ・マットレスはヘッドレスコマースを実施することで、SNSなど顧客とのタッチポイントの増加を狙い、拡販に成功しました。また、デバイス別でUI(※3)を出し分けることで、よりスムーズな顧客体験を可能にしました。具体的には以下の画像のとおりです。
※3 UI…”User Interface”の略。一般的に、利用者(ユーザー)とサービスや製品が接する面(インターフェイス)のことをUser Interface(ユーザーインターフェイス)と呼びます。

▼PCサイトでのFAQのページの画像。左に質問の大分類があり、中央には大分類の詳細の項目があります。

https://jp.koala.com/help

▼スマホサイトのFAQのページ画像。最初は大分類のみが用意されていて、タップをすることで詳細の質問項目を探せるUIになっています。

まとめ

以上がヘッドレスコマースについての解説と導入するべき理由についての説明でした。今後のEC市場はSNSやウェアラブルデバイスなど、様々なサービスから顧客情報が収集され、パーソナライズされたサービスの展開が予想されます。そのような、市場の変化に対応するためにはヘッドレスコマースの導入は大きな要素になります。

自社のECサービスの状況を分析して、さらなるサービスの拡大を考えた時にどの様なサービスの展開があるのかを考えてみると良いでしょう。